ヒマラヤ2018 ムクト・ヒマール(6087m) 4.26~5.17 NO.2   

2018年 05月 21日

NO.2登頂~カトマンズ~帰国

58日(火)晴れ BC940・・・1035氷河(5450m)・・・1335HC(5755m)

よい天気で明けた。
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新しい下着を身に付けて(ヒマラヤアタック時は慣例になっている)、鯉のぼりをザックに入れることは忘れない。
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朝食後はHCへ揚げる装備や食料を点検する。
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靴を履いているとラーメンがきた。
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1時間前にトーストと目玉焼きを食べたばかりなのにブツブツ。
半分口に入れるのが精一杯だった。

HCへのサポートにはパサンが同行することになっていたが、昨日のHC往復で足が痛いとかでラメスが上がることになった。
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じゃ 行ってくるよと皆に手を振ると、コックのポラカスが手を握り“Good luck!”。

ガレ場を登ると氷河の末端辺りが見えてきて、ここは2016年秋の最高到達地点直下である。
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だんだん氷河が近くなってきて、ついにやってきたぞと叫びたい気持ちでいっぱいだ。
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氷河を辿り山頂に立ちたいという、小さな夢に向かっている自分がここにいる。

ザレ斜面をトラバースすると氷河には簡単に乗ることができた。
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氷河は緩いが凍った箇所が多いのでアイゼン(ヒマラヤ用チタン製)を装着する。
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チャプテはルート工作があるので先行する。
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氷河は末端部に近いのでアイスフォールやセラック(氷塔)になっている。
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氷河の幅は1キロ以上あり薄く新雪が乗った状態だが、気をつけなければならないヒドゥンクレバスはないようだ。
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ただ強い日射で雪が湿りアイセンが団子になるので疲れる。
ラメスはアイゼンについた雪をピッケルで落としながら後を歩いている。

標高5500mを超える。
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セラックの向こうには青いヒマラヤの空が広がっている。
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ホンデ・ヒマールと6338m峰が見えてくる。
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左に並ぶ奥大日岳から大日岳に似た峰は6128m峰だろう。
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登頂ルートの支稜が見えるようになってきた。
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チャプテが言っていた二つのルートが分かった。
①緩い雪の尾根を左に登る。
②中央の雪壁を突き上げる。

ルート工作があると言っていたので②であろう。
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ホンデ・ヒマールと6338m峰を繋ぐ鞍部が見えてくる。
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標高差400mを4時間かけてHC予定地に着き、風があるので3人でテントを設営した。
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テント設営後はミルクティーを飲み、チャプテはロープをフィックスすると言って出て行った。

動脈血酸素飽和度(
SpO2)の数値は77%だ。
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保険がかかっていないラメスはHCに泊まることはできずBCに下っていった。
明日の朝には登ってくることになっている。

1
時間ぐらいしてテントから出ると雪稜に立つチャプテの姿が見えた。
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部分的に50度ぐらいありそうな雪壁だが、フィックスロープがあれば問題はなさそうだ。
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戻ってきたチャプテに聞いてみる「上はどうだった?」
easyです。フィックスロープの上は緩いので、クレバスもないしメインザイルがあれば大丈夫です。

夕食は五目ごはん&赤貝
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今夜は禁酒!


チャプテはジャガイモを温めている。
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動脈血酸素飽和度(SpO2)の数値は84%と改善された。
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暗くなると風が強まり雪が降りはじめるが、きっと明日は素敵な登頂日和になるだろう。


59日(水)快晴 HC545・・・750支稜(5950m)・・・850ムクト・ヒマール(6087m)905・・・925支稜(5950m)・・・1030HC1150・・・1430BC

長い夜だった。
テントをたたく風と雪の音で目が覚めた。
テントを潰された1年前のヤラピークを思いだしていた。

新雪が20センチ以上積もるとチャプテがフィックスロープを張った斜面は雪崩の恐れがある。
その場合は
支稜の末端から登ればいいが時間がかかるだろう。
風が強くても雪が深くても登頂は無理だろう。
いや時間をかけたら山頂に立てるだろう、そんなことを考えながら過ごす夜は長かった。

眠れたのはたった2時間ぐらいで、この高度での睡眠不足は老体には過酷だ。
風が強くて雪は明け方まで降り続いていた。

幸いにも白みはじめると雪は止み風も少し弱まった。
とはいえテントの外では雪が舞い上がっているが、気温はマイナス15度だから日本の冬山なみである。

インスタント焼きそばとミルクティーで出発する。
振り返ると朝日が当たりはじめたニルギリがツクチェ・ピークの左に見えた。
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降り積もった新雪は1520センチだ。
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岩場のトラバースを終えると急な斜面に入ってゆく。
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朝日が当たった斜面を前にしてチャプテに聞く
「雪崩は大丈夫か?」
「大丈夫です」
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フィックスロープは完全に埋没している。
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チャプテに聞く
「昨日張ったロープはもっと右じゃなかったのか?」
彼はフィックスロープを掘り出そうとするが、上から流れてきた雪に埋まった状態で見つからない。
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そろそろフィックスロープが出てきてもよさそうだ。
そう思ったときチャプテが手を上げた。



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ロープにユマールをセットした。
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「私はゆっくりしか登れないぞ」
チャプテビスターリでOKです。
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フィックスロープの支点はスノーバーではなく、今シーズンは氷が多いためアイススクリューを使っている。
斜度は45度から50度といったところだが、新雪なのでステップが崩れて一歩一歩が重い。

そうだここはヒマラヤなんだから、一歩ごとに呼吸を整えながら高みを目指そう。
立ち止まっては周囲の景色も楽しもう。
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雪壁を登りきると支稜に立った。
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HCが小さく見えていて、そこから1本のトレースが続いている。
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支稜は広い雪の斜面が広がっていて、左奥には山頂らしきが見えている。
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風は10mぐらいで雪煙は舞い上がっていない。
ここで登頂を確信した。

チャプテは軽い足どりで新雪を蹴散らしながら青空に吸い込まれていく。
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6000mを少し超えるだけの小さなピークだが、初めての山に登ることはシェルパにとっても嬉しいのだろう。

山頂直下でチャプテ「あそこが山頂です」と指差した。
「先に行っていいよ。でも最後の一歩は私に残しておいてくれ」
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バックはホンデ・ヒマールと6338m峰
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シタチュチュラ
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ドルパ方面
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ホンデ・ヒマール6556
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ツクチェ・ピーク(右)の左後方はニルギリとアンナプルナ山群
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HCに下るとラメスが待ってくれていて、“congratulation”と登頂を祝福してくれた。

しっかり登頂ルートを眼に焼き付ける。
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たっぷり飲み物を口にして乾いた喉を潤し、ツクチェ・ピークとニルギリを正面にしながら氷河を下っていく。
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再び訪れることのない山域であろう、何度も振り返りながら下ってゆこう。
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氷河が終わったところで小休止して登頂の余韻に浸っていると、チャプテ16日から仕事が入っています。
明日はカロパニに下ります」

信じられない思いを強くした。
予備日を含めて15日まではBCにいてもよく、せめて明日か明後日まではBCでのんびり過ごしたいと考えていたからだ。

そんな雇い主を無視した行動はないだろう、と文句を言おうとしたが山中での喧嘩は避けたいと思いなおした。
コックのポラカスは下痢が続いているらしく、明日の朝の天気に任せようと気持ちを切り替えることにした。

BCでは皆が登頂を祝ってくれた。
最も歳が近いポラカスは抱き合って喜んでくれた。

BCでも10センチの新雪が解けずに残っていた。
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夕食のスパゲティがきたのでビールを頼んだら、なんと驚くことに返事はビールありません。
「何故だ!? まだ23缶あるだろう!」
「マルファを出発した日に馬につけた樽が木にぶつかって、中に入っていたビールが3缶ぐらい壊れました」
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ガーン(> <。登頂記念日なのになんてこった。
ガックリした。
マルファからラム酒を持ち上げていたのは正解だった。

湯割りで一人淋しく祝杯だ。
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のこりのボトルは皆で飲んでくれ。

カアチャンに電話した。
「登ったよ」
「へー すごいじゃん」
「まあな」

510日(木)晴れ時々曇り BC915・・・1220ヒドン・バレー5100m)・・・1455ダンパス・パス・・・1650カロパニ

目覚めると15センチの新雪だ。

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上は20センチ以上あると考えられ、昨日の登頂は幸運だったといえそうだ。

もう訪れることもない
ヒドン・バレーであり、せめて今日ぐらいは休養日としたかった。
チャプテは16日からランタン行きが決まっているらしく、13

日にはカトマンズに帰りたいと思っている。

ゴタゴタはヒマラヤ登山につき物で、なんでも受け入れる度量が必要である。
しかし今回のようなことは初めてで、
この身勝手な行動には怒り以上の感情しかない。

装備をバッグに詰め込んだ。

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テントから出ると撤収が始まっていた。

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明後日はマルファでビールだと気を持ち直し、周囲を見回したあと下山を開始する。

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来るときと違ってヒドン・バレーは銀世界になっていて、白さを増したタシカンも見納めである。
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ツクチェ・ピークは姿を変えてゆく。
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ダンパス・パスの登りになると雪が増えてきて、ポーターたちは何度も小休止を繰り返すようになる。
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ダンパス・パスの手前で振り返ると、曇り空の下にムクト・ヒマールが見えた。
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ヒドン・バレーの峰々よさようなら。
ありがとう。

パスを越える。
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カロパニに着くころには雪が舞いはじめ、コンロがあるキッチンテントでミルクティー。
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体力的だけでなく気持ちも疲れた一日だった。



511日(金)快晴 

カロパニ845・・・1325尾根4800・・・1500ヤク・カルカ1540・・・1920マルファ (ホテル・ローヤルスノーレオパード)

今日も青空が広がる天気になっている。
今回は雪の降る日が多くてツクチェ・ピークは入山時よりも白さを増している。
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年下のラクパがミルクティーをテントに持ってきて、“Good morning Sir”と言われたのには大笑いしてしまった。

いつも食事やお茶を運んでくるのは23歳のパサンだった。
彼は私のことを“オジサン”と呼ぶのであった。
また2013年秋のタシカンⅠ峰では、ポーターの
ディパには“外国さんと呼ばれたから面白い。

ポラカスは眼の不調を訴えて歩くことができないという。
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下痢に続いて眼の不調とは高度障害にちがいない。
すでにレスキューヘリは呼んでいて、10時までには飛んでくることになっている。

年上のラクパと出発する。
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雪は表面だけが硬いモナカ状態で、一歩ずつ穴を開けて進むから時間を要しそうだ。

しばらくすると年下のラクパとラメスが追いついた。
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いくら強いポーターたちとはいえ日差しで雪が緩むと登りは大変で、彼らは荷を降ろして空身でトレースをつけて進む。
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ダンパス・ピークを目指す男女12名の北海道隊とすれ違う。
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「日本人ですか?」
「そうですよ」
「ダウラギリ一周ですか?」
「ムクト・ヒマールです」

長いトラバースを終えると尾根に立ち、ついにツクチェ・ピークとダウラギリⅠ峰ともお別れだ。
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このダンパス・ピーク南面のトラバースは4度目だが、今回ほど長く感じたことはなかった。

ヤク・カルカには北海道隊のテントが張られていて、留守番からサービスされた飲み物が乾いた喉に有難かった。
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北海道隊は雪のためヤク・カルカで4泊したそうだ。
今日はカロパニ付近で泊まり、ダンパス・ピークのアタックは明日らしい。
彼らのうち何名がダンパス・ピークに登れるだろうか。

30
分あまり下ったところからジョムソンの町が見渡せるが、ここから麓のマルファの村までの遠いことを知っている。
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いくら下りとはいえ登頂から休養日なしでは老体には過酷すぎて、マルファの直線道路が見えてからでも30分では着かないだろう。
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ついに暗闇に包まれたマルファに下山する。
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ホテルが建つ村はずれまでの石畳の長かったこと遠かったこと。

まずはビールで乾杯だ!
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チキンに飢えていたので4皿目。
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ついにレスキューヘリは来なかった。
ポラカスには二人のパサンが付き添って、歩いてヤク・カルカまで下ったと聞いた。

明日の昼ごろにはマルファに着くという。
3人とも空身で下ったため多くの荷物はカロパニに置いてあり、明日の行動を相談する皆の顔は真剣そうである。
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明日のマルファ滞在が決まった。


512日(土)マルファ滞在

チャプテ、2人のラクパ、ラメスの4人がヤク・カルカまでポラカスを迎えに上がる。

久しぶりにダルバートを食べた。
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5回目になるマルファの村は散歩をする気にもなれない。

マルファはリンゴの産地として知られているが、標高が高いからか小さいのが特徴だ。
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地図を広げてコーヒーを飲みながら過ごす。
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午後のバスでカトマンズへ帰る2人のラクパが戻ってくる。
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午後1時になるとポラカスが帰ってきて、かなり疲れた表情をしていたけれど一安心。
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しかし肺水腫の疑いがあるので明らかに高山病である。

ポラカスの無事を確認したので空きっ腹に焼き飯とビールを注文した。
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ホテルの前にはマニ車が並んでいる。
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マニ車⇒チベット仏教の信者がお祈りに使う道具で円筒形をしている。
内部にはロール状の経文が納められていて、これを回すだけでお経を唱えたのと同じ功徳がある。
大きさは手に持てるものから数十センチ、寺院などでは数メートルもの大きなマニ車が設置されている。
チベット仏教の場合は「オンマニ ペメ フム」(阿弥陀仏の意)と唱えながらマニ車を右回りに回転させる。
またチベットのカイラスなどの聖地は右回りに巡礼する。

荷物を運ぶロバや馬が行き交っている。
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午後になると必ず強風が吹き荒れるので、馬たちも目を細めて風に向かっている。
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レスキューヘリはポラカスと付き添いのパサンを乗せ、カトマンズに向かって飛び立った。
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ラメスと若いパサンは荷を降ろしにカロパニに向かっていて、ホテルに戻ったのは夜の8時になった。

北海道隊
による今日のダンパス・ピーク登頂は敗退で、全員揃って明日はヤク・カルカに下るそうである。


513日(日)マルファ840⇒⇒1020ARJUNG12:20⇒⇒1715ベニ(ムスタンホテル)

荷物を屋根に積んでベニに向かうバス。
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直線道路からは一昨日下った斜面が眺められ、もう来ることもないマルファの村よさようなら。
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道路工事のため手前のARJUNGで早い昼食にする。
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ビールを頼むと羊の肉が出るけれど、ネパール人向きなのか年寄りには固かった。 
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ダルバート⇒ダル(豆のスープ)、バート(ご飯)、タルカリ(野菜のおかず)、アチャール(漬物)がセットになっている。
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ダルバートはネパールの日常食になっていて、どんどんおかわりを勧めてくることが多い。

腹いっぱいで食べられなくなり“プギョ”と言ったところ周囲から笑いが起きた。
country?」
Japanese

プギョ⇒⇒もういっぱいです
ミトチャ⇒⇒美味しいです

悪路をノロノロ走り続けたバスは好きになれないベニに着いてしまう。
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どうせまたゴキブリ登場なんだろうから、酔って眠ってしまうが勝に決まっている。
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ベニの町は暗くなっても賑わっている。
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何を目的に人々は集まっているのだろう。
何があって歩いたり座ったりしているのだろう。
買い物、仕事、旅人・・・?

そういう自分もその一人なのだろう。


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明日はカトマンズだ。


514日(月)ベニ615⇒⇒1030ポカラ⇒⇒1250ランチ1330⇒⇒1800カトマンズ(ホーリーヒマラヤホテル)

5列シートのハイエースに20人を乗せて一路カトマンズへ。
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途中で揚げ物の朝食を(固くて味はいまいちでお勧めできない)
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ポカラを過ぎると70キロぐらいの速度で走れる場所もあるけれど、地図にはハイウェイと記されているが日本とは大違い。
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もちろんランチはダルバート。
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昨日の悪路に比べて揺れはなかったが、10時間を超える走りにクッタクタで着いたのはカトマンズ。
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シャワーのあとで行き先は日本食レストラン「一番」だ。
注文は27日と同じエベレストビールに焼き鳥&あげだしとうふ。
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塩で焼いてくれと頼んだ焼き鳥は、またしても前回同様タレときたから困ったものである。

でも美味しかった。




515日(火)カトマンズ滞在

昼は雰囲気を変えて近くのレストランに入ってみる。
オンマニペメフムを耳にしながら一人旅の終わりを感じていた。

日本人向けに味付けしてくれたのか、チキンカレーはあまり辛くはなく美味しかった。
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ビールも頼んで900ルピー。

午後はチャプテと政府観光省(登山局)へ行く。
例の
お偉いさんみたいなオジサンがcongratulation”と登頂を祝福してくれた。

登頂証明書は明日になるとかで残念に思ったが、“
See you again”と握手を求められた。
なかなかカワイイところもあるじゃないか。

ホテルに帰るとダワと1年前のランタンを一緒したタワが来た。
彼らは日本人8名とムスタンへ行っていて、先ほど帰ってきたばかりであった。
ムクト・ヒマールの登頂を祝ってくれた。

ダワに質問をした。
チャプテが勝手に予定を変更し、16日からランタンへ行くことを知っていたのかだ。
返事はまったく知らないことであり驚いていた。
もうチャプテを使わないと平謝りだった。

ダワは日本人8名との夕食会で忙しく、タワと日本料理を食べにいったらと勧められた。
タワは日本語を少しは理解できるのだが、お互いに気遣いするだろうから断った。
それにカトマンズ最後の夜は一人で静かに過ごしたかった。


またしても徒歩3分の「一番」だ。
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昨夜の店員がいてニヤニヤ薄笑いを浮かべている。

ビールを注文すると小皿が出てツケモノです。
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二晩続くとアテが付くんだな。

昨日と同じ焼き鳥を頼む。
昨日は
ソルトではなくタレだったじゃないか。
いいかソルトだぞ、絶対にSaltだぞ、
ソルトで焼いてくれと繰り返した。

分かったような顔をしたので今夜は塩の焼き鳥だ!
ところが出たのはタレときた。
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文句を言うと「ソルトありません」ときた。

野菜(キャベツ、ニンジン、玉葱、ピーマン)炒めがきた。
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塩と胡椒の味付けが絶妙で、よくもソルトありませんと言ったもんだ。
あきれて文句を言う気になれないとはこのことだ。

食後に日本茶すら出てこない。
オーナーの経営方針に問題ありである。



516日(水)カトマンズ〔TG3201330⇒⇒1815バンコク〔TG6222330⇒⇒

ダワとタワがホテルにやってきた。

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ムクト・ヒマールの登山許可書と登頂証明書を受け取った。

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忘れた買い物はないかと聞かれたので、欲しいと思っていたサイズのタルチョーを買いに行ってもらう。
マルファで見た縦に張るタイプである。

ダワは日本人の対応で忙しく、また来るからねと握手で別れた。
空港にはタワが送ってくれた。
タワは夏には薬師岳山荘で働くことになっていて、必ず日本に来てくださいと声をかけた。

帰国便はこれまで何度も乗ったタイ航空。
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次のネパールはいつになるだろうか・・・

517日(木)⇒⇒700関空840⇒⇒1115徳島駅



帰国した翌18日、ダワから電話があった。
ムクト・ヒマールのことを観光省で調べた結果報告だ。
日本人としての登頂は初めてです。日本人以外に登った人はいるそうですが、国や人数など詳しいことは分かりません。」・・・だった。

8000
m峰などでは登頂や敗退の詳細な記録が残される。
たとえば2008年秋のマナスルでは〔
9 マナスル8,163 N 秋北東面1 鶴木博10/26,400mで断念。〕となっている。

ムクト・ヒマールは
地図には山名表示があるとはいえ、6000mをわずかに超えるだけの小さなピークである。
2年前にはダワに頼んで多くのシェルパたちに聞いてもらったが、登ったシェルパがいないどころか場所さえ知られていない山である。
しかし手垢のついていない山をヒマラヤで展開できたことに満足している。






by nakatuminesan | 2018-05-21 11:13 | ヒマラヤ | Comments(6)

Commented by ナマステおばさん at 2018-05-23 13:18 x
登頂おめでとうございます!
今回は、お天気に味方してもらってよかったですね。
わたしは、トレッキングの経験しかないけど、苦労すればこんな景色の中にいられるんですね~
酸素飽和度が84%に改善されるなんて凄い!
ブログは高山病にかからないので、助かるな~(笑)
でももう一度、苦しみに行きたい気もしています。
いつか、今回の登山の話も聞きたいものです。
人生長いようで短い。残された人生頑張るぞ!
元気をもらいました。ありがとうございます!




Commented by nakatuminesan at 2018-05-23 15:06
ナマステおばさん
登頂を祝ってくれてありがとう。

2013年秋のタシカンⅠ峰でも思ったことですが、手垢のついていない山の良さを実感しました。
すべてにおいて先が未知の世界に入っていく面白さです。
思い切って再挑戦してよかったです。

でも5年前に比べて疲れましたよ。
60代における5歳の違いは大きいと思いました。

それにしても、あのヒマラヤの青い空の記憶は宝です。
また話を聞いてほしいと思っています。
Commented by 乾杯大好きオバサン at 2018-05-25 22:49 x
登頂おめでとうございます!
ブログ毎日が楽しく、
たくさん夢を見させていただきました。
ありがとうございました。

登頂直後の無念の乾杯・・・(>_<)
今度は盛大にやりましょうね!
そして話もたくさん聞きたいです。
Commented by nakatuminesan at 2018-05-26 08:04
みなさんの応援のおかげで登頂が叶いました(^-^)v
今回は絶対に登らなければという思いが強くありました。
でもプレッシャーも後押ししてくれたみたいです。
あのヒマラヤの青い空と白い峰々を思い浮かべると、今になって登頂の実感が湧いてきます。

そうだそうだ…やはり乾杯はビールでなければいけませんね!
近いうちに楽しい仲間たちと集まって、パーッと盛り上がりたいと思います。
よろしく~!
Commented by タバコ屋 at 2018-05-29 20:36 x
登頂おめでとうございます!
ブログのおかげで、たくさんの綺麗な写真が見れて嬉しいです。
頂上の鯉のぼりが🎏最高‼︎です。
リベンジお疲れ様でした。
Commented by nakatuminesan at 2018-05-30 07:46
ありがとうございます。
鯉のぼりと一緒に登頂できました♪
山頂の雪に埋めようかと思いましたが日本まで持ち帰りました。
記念となる鯉のぼりは大事な宝物です。

ヒマラヤの眺めを楽しんでください。

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