懐かしの乗鞍岳   

2015年 03月 19日

17日は申し分のない好天に恵まれたこともあり、剣ヶ峰には楽勝で登頂することができた。
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この季節には何度も通った乗鞍岳ではあるが、あの加藤文太郎のことは頭から離れることはない。

昭和4年は文太郎にとって初めての本格的冬山であり、1月3日には八ヶ岳の夏沢温泉から硫黄岳と横岳を越えて赤岳を往復している。
翌日は乗鞍岳山麓の番所原へ移動し、5日には山頂を往復するという健脚ぶりを発揮している。

単独行から・・・
「四日の夕方、僕は番所原へやってきた。(中略)
五日は早朝から星が出ていた。(中略)
迷うこともなくラッセルも楽で案外早く冷泉小屋に着いた。(中略)
小屋からちょっと登るともう森林帯を離れて、すばらしい斜面が頂上までつづいている。
雪は風のためよく締まっていた。
シュプールを伝って難なく肩の小屋に着く。(中略)
スキーをアイゼンに変えて頂上に向かう。
風はなかなか強いが天気はとてもよい。
午後三時、頂きに立ちベルグハイルを三唱した。(中略)
あたりは真白な一月の山が互いに美を競う。」
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文太郎は山頂までの標高差800mを2時間で登っている。
冷泉小屋を午後1時に出て3時に登頂し、なんと冷泉小屋には4時に着いているとは驚きで、夏ならともかく雪深い冬の山である。
いくら20代前半の若者だったとはいえ、誰にでも真似のできる行動とは思えない。

若かったころから文太郎に憧れがあり、冷泉小屋を経由して乗鞍岳に立ったことは何度かある。
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今でも文太郎を想いながら登る山は数多くあり、一昨年と昨年に続き先日の乗鞍岳もその一つである。
昭和4年1月5日も天気はよかったとあり、真っ白に雪化粧した姿に感動したのは我々と同じである。
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すぐ後に登ることになる槍ヶ岳や穂高岳も見たことだろうし、そのときの心境はどんなだっただろうか。
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肩の小屋へは先行する女性たちと離れ、ゆっくりと文太郎を想いながら進んだ。
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この剣ヶ峰と大日岳を文太郎も見ただろうと思うだけで、登る楽しみが増すように感じられる乗鞍岳だった。
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by nakatuminesan | 2015-03-19 15:36 | 昔むかし | Comments(0)

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