不思議な登山者
2011年 07月 04日
年末とあってトレースがあり、槍平には楽に入ることができた。
冬季小屋が空いていたので、ツェルトを張らずにすんだこともラッキーだ。
一年前にもここに泊まり、大喰岳西尾根の末端手前から中崎尾根に上がり、西鎌尾根から槍を目指した。
ところが西鎌尾根の上部は風が強く、行動不能となり2900mで敗退していた。
今年は大喰岳西尾根から登る。
今年こそ登りたいと思った。
翌日はヘッドランプの灯りを頼りに、暗いうちから行動を起こす。
大喰岳西尾根に取り付くと、古いトレースはあるものの、上部から流れてきた雪でほとんど消えている。
心配だったラッセルはそう深くはなく、登るにつれ雪の斜面から明瞭な雪稜となっていくことが嬉しい。
今日の登頂は間違いないとか、いや昼が近くなると風が出るのではと気はあせる。
さしたる困難もなく大喰岳に立つと、槍はガスで見えないが風は一年前に比べると頬をなでるようだ。
飛騨乗越が近づくとアイスバーンの斜面で二人の登山者が立ち止まっている。
言葉遣いで日本人と外国人だと分かった。
驚いたことに外国人がアイゼンを装着していない。
思わず「危険だ」と叫んだように覚えている。
日本人の方が「槍の冬季小屋にアイゼンがあるから心配しないでくれ」と言い残し、その男は走るように冬季小屋へ引き返した。
ここは冬の稜線3000mなのに、アイゼンを持たずに歩くとは。
槍はアイゼンで登ったのか?
大喰岳ならアイゼンは不要と考えたのか?
外国人も自分に構わずに行ってくれと、私に向かって槍の方向を指差した。
無鉄砲な行動をする冬山登山者がいるものだと、今思い出しても不思議でしようがない。
雪の槍ヶ岳は何度も登っていたが、厳冬はじつに13年ぶりとあって嬉しい登頂だった。
by nakatuminesan | 2011-07-04 18:31 | 山のあれこれ | Comments(2)