道迷い   

2011年 09月 20日

山の遭難者の三分の一が道迷いという警察庁の統計がある。
「登山中に道に迷って遭難」というニュースはあとを絶たず、以前から山岳遭難事故原因のトップになっている。

道迷いとは単なる道間違いとは異なり、道を誤ったうえに現在位置が把握できない状況である。
道間違いなら現在地を確認できる地点まで引き返せばすむ。
ところが誤りに気付いても、下るほうが楽だからと安易に下ってしまう。
もちろん地形図上での現在位置は把握できていない。
やがて谷が現れると滝や急流に阻まれ、冷静な判断はできなくなる。

①迷う前の地点まで引き返す。
②決して沢には下らず尾根へ上がる。
この二つは山の掟である。

下山予定日を過ぎても連絡がなければ、家族からの救助要請があるのは当然。
2003年11月下旬に起きた千葉県の遭難騒動を記憶の方は少ないだろうか。

50代から80代の30名パーティーが日帰り登山(ハイクング?)をし、複雑な地形に何度も道を誤った結果ビバークした。
少人数なら早く歩けるし下山可能だったかもしれない。
怪我人もないパーティーから救助要請はしないが、深夜2時ごろには投光器を照らしたヘリが上空を飛ぶ。
地上からは170人態勢という大掛かりの捜索が始まっていた。

翌朝捜索隊と合流し山から下りると、百人もの報道陣とテレビ局のカメラマンが待ち構えていた。
山のヤさえ知らない報道人からは、「なぜ?」「責任は?」の質問は当然だった。
道こそ誤ったが怪我もなく、判断は間違っていなかったとリーダーは言い切った。

マスコミが騒ぎ立てた理由には、3人ほどならともかく高齢者を含む30名という人数があった。
しかも標高400mにも満たない房総の山で遭難し、170人もの捜索隊が出動とあればニュースのインパクトは強い。
「マスコミ遭難」との表現が当てはまる一件でさえあった。

最近は高度計付腕時計を多くの登山者が持つようになり、コンパスと2.5万地形図での現在地の把握は精度が高いはずである。
しかし慣れからくる油断と自信過剰には気をつけなければならない。
道迷い_c0219866_14453158.jpg

by nakatuminesan | 2011-09-20 14:53 | 山のあれこれ | Comments(0)

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