山は逃げるか   

2010年 09月 08日

危ない登山者に対する警告としてよく「山は逃げない」という言葉が使われる。
中高年から登山を始めた人には失礼だが、「山は逃げる」と考えている人が多いのではないだろうか。
特に体力面で先の短い高年者の中には、せっせと山行を重ねている人がいるように見える。

だが「山は逃げる」という考えは、中高年登山者だけのものでもない。
長年の経験がある者でも、「山は逃げる」を感じながら登山を続けてきたはずである。

『風雪のビバーク』で知られる松濤明も「山は逃げる」と考えていたようだ。
『山想う心』から・・・
古いノートを繰って見ると、その当時果たしたいと思ったスケジュールがずらりと書きつらねてある。
(中略)
私は古いスケジュールを果たしていこう。
が、山に行くには元手がいる。
その最大のものは体力である。
体力が衰えては思う山にも登れまい。
私の古いノートに残る計画は、幸い大部分が年を取ってもやれるものであるが、中に若干のものは少々手強くて、私はこれをやれるのはせいぜい三十二、三歳ぐらいまでと思っている。
なぜ三十二、三歳かと言っても返事に困るが、何となくそう思われてならないのである。
それまでには後五年ある。
が、以前の体力を取り戻して、さらにそれ以上を蓄積するためには、五年の歳月も短かすぎて愚図愚図していられない気持ちになる。 ・・・


この歳まで登山を続けられるとは私は考えていなかったし、「山は逃げる」を意識しながら冬山の単独行を長く続けたが常に臆病で慎重だった。
体力と相談しながら長く続けられるのが登山の面白さのように思う。

山は逃げるか_c0219866_1491586.jpg
ヒマラヤのティリチョ・ピーク7134m

by nakatuminesan | 2010-09-08 14:18 | 山のあれこれ | Comments(0)

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